外国人を雇用する際、以下のような不安がありませんか?
- 「外国人を採用する手続き方法が分からない。」
- 「ビザ取得や更新がうまくいくか心配だ。」
実際、日本での外国人雇用は社会保険の加入や給与計算方法など、日本人とほとんど同じ手続きを踏みます。しかし、特に「就労ビザ」の取得や更新に関しては注意が必要です。ビザが取れない場合、外国人を日本で合法的に雇用できなくなります。
この記事では、次の3つのケースを中心に、外国人雇用における具体的な手続きと注意すべきポイントを解説します。
- 海外にいる外国人を日本に呼んで雇用する場合
- 日本に住んでいる外国人を中途採用する場合(他社からの転職も含む)
- 日本に留学中の外国人を新卒として採用する場合
外国人雇用手続きの流れ
外国人雇用の手続きは、主に以下の5つのステップに分かれます。
ステップ1:事前調査
まず、面接を始める前に、外国人候補者が就労ビザを取得できるかどうかを確認する必要があります。ビザが取れない場合、その候補者を雇用することは不可能なので、最初にこの見込みを確認することが重要です。
ステップ2:内定と雇用契約書の作成
面接後、内定を出したら、次に雇用契約書を作成します。この契約書は、就労ビザを申請する際に必要な書類の一つです。外国人を雇用する場合、契約書には通常の内容に加えて、就労ビザに関する特別な条項を含めることが推奨されます。
契約書には、雇用主が従業員のビザ取得を支援し、日本の入国管理局における必要な申請手続きを行う責任を負うことを明記する必要があります。これには、以下のような内容が含まれる場合があります。
- スポンサーするビザの種類(例:技術・人文知識・国際業務ビザ、エンジニアビザなど)。
- 雇用期間中のビザの更新や延長の支援に関する約束事項。
■例:
“The Employer agrees to sponsor the Employee’s work visa for the duration of the employment, and will assist in all required applications and renewals in compliance with Japanese immigration laws.” (「雇用主は、雇用期間中、従業員の就労ビザをスポンサーし、日本の入国管理法に基づいて、必要な申請および更新をすべて支援するものとします。」)
ステップ3:就労ビザの申請
雇用契約書を基に、外国人労働者の就労ビザを申請します。申請は、企業所在地を管轄する入国管理局で行い、通常1〜3か月の審査期間がかかります。
ステップ4:ビザ審査
ビザの審査は、入国管理局で外国人の学歴、職歴、企業の財務状況、給与水準などが考慮されます。審査に合格すれば、外国人は日本で合法的に働くことができます。
ステップ5:雇用開始とビザ更新の管理
ビザが取得できたら、雇用を開始します。ただし、ビザの更新時期には注意が必要で、在留期間の管理を行い、期限切れになる前に更新手続きを行う必要があります。
ここからそれぞれのステップを細かく説明をしていきます。
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事前調査
外国人を雇用する際に最初に確認すべきは、その候補者が就労ビザを取得できるかどうかです。特に、「技術・人文知識・国際業務ビザ」が必要となるオフィスワークのポジションの場合、学歴や職歴が重要な要素となります。
例えば、営業職やエンジニア、マーケティング職では、それぞれの分野に関連する学歴や職歴が求められます。外国人候補者がこれらの条件を満たしていない場合、ビザが取得できない可能性が高くなります。
学歴と職歴の確認ポイント 外国人労働者がビザを取得できるかどうかは、主に学歴や職歴によって決まります。たとえば、外国人候補者が大学で専攻した内容が、採用しようとしている職種と関連していることが求められます。もし学歴が関連していない場合、10年以上の職務経験が必要です。
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内定と雇用契約書の作成
内定後には、雇用契約書を作成しますが、この契約書には、就労ビザ取得の条件を明記しておくことが大切です。具体的には、「在留資格の取得および更新を条件として有効である」という条項を追加することで、後のトラブルを避けることができます。
雇用契約書が完成したら、就労ビザの申請手続きを入国管理局で行います。この段階で提出する書類には、外国人の学歴証明書や職歴証明書、企業の財務諸表などが含まれます。
就労ビザは通常、1年、3年、5年などの特定の期間で発行されるため、契約書には雇用期間がビザの有効期間とどのように関連しているかを明確に記載する必要があります。ビザが更新されない場合、雇用契約は終了する可能性があります。
例:
“The employment contract is valid for the duration of the Employee’s valid work visa, and may be terminated in the event that the Employee is unable to renew their visa or maintain their legal work status in Japan.” (「雇用契約は、従業員の有効な就労ビザの期間中有効であり、従業員がビザの更新に失敗した場合や日本における法的な就労資格を維持できない場合には契約が終了することがあります。」)
■注意事項:
この条項はビザ申請そのものには影響を与えませんが、雇用契約が日本の労働法および入国管理法に準拠していることを明示する条項を入れるのが良い実務です。外国人労働者は、自国の労働法が日本の法律と同じだと考えることが多いですが、実際は異なる場合があります。
例:
“The employment relationship shall be conducted in accordance with Japanese labor and immigration laws. Both parties are expected to adhere to these laws and any relevant regulations pertaining to foreign workers.” (「雇用関係は日本の労働法および入国管理法に基づいて行われ、両当事者はこれらの法律および外国人労働者に関連する規則を遵守することが求められます。」)
雇用契約書の作成が完了したら、次のステップは入国管理局へのビザ申請です。この段階で提出する書類には、外国人労働者の学歴証明書、職務経歴書、会社の財務諸表などが含まれます。
会社が入国管理要件を満たしていることを確認する
入国管理局は、外国人労働者をサポートできる企業の能力を評価します。次のような会社書類を提出する準備をしましょう。
- 会社の登記簿謄本:会社が合法的に登録されていることを示すもの
- 財務記録(例:損益計算書):会社の財務的な安定性を示すもの
- 納税証明書:会社が税務上の義務を果たしていることを示すもの
会社が設立間もない、または財務履歴が限られている場合は、外国人労働者の雇用が安定していることを示す追加の資料を提出する必要があるかもしれません。
ビザ取得の成功率を上げるために – 明確な職務記述を準備する
入国管理局は、職務内容が選定されたビザの種類に適合しているかを評価します。職務記述は詳細かつ具体的で、労働者の資格に合ったものでなければなりません。
業務内容、責任の範囲、会社内での役割を明確に記載し、曖昧な表現や広すぎる職務記述は避けましょう。
例文:
「ITエンジニア」とだけ書くのではなく、具体的な業務を記載します。例えば、「従業員は、ソフトウェアアプリケーションの開発、クラウドインフラの管理、会社のITシステムの技術サポートを担当します。」
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就労ビザの申請
海外にいる外国人を雇用する場合
海外にいる外国人を日本に呼んで雇用する場合、最初に「在留資格認定証明書」を入国管理局に申請します。この証明書が発行されると、外国人労働者は現地でビザを申請できるようになります。審査には通常1〜3か月かかりますので、採用が決まり次第、早めに手続きを進めることが推奨されます。
日本に住んでいる外国人を中途採用する場合
すでに日本に住んでいる外国人を中途採用する場合、現在の在留資格が新しい職務に合っているかを確認することが必要です。転職の場合は、就労資格証明書を取得して、採用職種が現在のビザで許可されていることを確認します。そうでない場合は、ビザの変更手続きが必要となります。
留学生を新卒採用する場合
日本に留学中の外国人を新卒として採用する場合、留学ビザから就労ビザへの変更が必要です。この手続きは、内定が決まった後、早めに進めることが大切です。特に、春は入国管理局が混雑するため、4月入社の外国人労働者のためには、前年12月頃から手続きを開始するのが望ましいです。
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ビザ審査
入国管理局でのビザ審査では、以下のポイントが重視されます。
- 学歴と職歴の関連性:外国人労働者の学歴や職歴が採用職種に関連しているかが確認されます。
- 企業の財務状況:企業が財務的に安定しているかどうかが審査され、企業の安定性が不十分な場合、ビザが不許可となる可能性があります。
- 給与水準:提供される給与が適切であるかどうかも審査の重要なポイントです。特に、外国人労働者の給与が日本人労働者と同等かどうかが確認されます。
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雇用開始とビザ更新の管理
就労ビザが発行され、雇用が開始された後も、外国人労働者のビザ更新時期には注意が必要です。企業は、従業員の在留期間を管理し、ビザが切れる前に更新手続きを行う必要があります。また、ビザが有効期限を過ぎてしまうと、外国人労働者が不法滞在となり、企業も不法就労助長罪として罰せられるリスクがあります。
- ハローワークへの届出
外国人を雇用した際には、ハローワークへの雇用状況の届出が必要です。
- 就業規則の説明
外国人労働者に対しては、日本の就業規則について十分に説明し、理解を得ることが大切です。必要に応じて、母国語での就業規則を提供することも検討すべきです。
まとめ
外国人を雇用する際の手続きは、しっかりと準備を行えばスムーズに進めることができます。特に、就労ビザの申請や更新には時間がかかるため、早めに行動することが重要です。今回紹介した各ステップを参考に、外国人労働者を適切に採用し、雇用を成功させましょう。